吉村佳先生寮長は料理上手1巻を読みました。

 コミックキューンで大好評連載中。料理上手なキシハラさんが寮長を務める寮《伍色館》を舞台に、ここで新生活を始めた高校1年生の小花悠里(おばなゆうり)と、寮や学校、町の人たちとの交流を描いた、美味しそうなごはんもたくさん出てくるほのぼの寮生活コメディです。


*人の優しさに触れる物語*

 『寮長は料理上手』の良いところは何か。絵の美しさ、美味しそうな料理、いろいろとあるけれど、一番はストーリーだと思う。

 第1話では、新しい町で一人暮らしを始める悠里に対しての、姫市原さんの心遣いが丁寧に描かれている。悠里の好きなものを入れたお弁当、たったそれだけのことだけど、姫市原さんが自分のことを考えて作ってくれたというのが悠里にとっては嬉しかった。

 第2話では、悠里は寮の決まりを覚えさせられることになる。買い出しを頼まれてお店を回るけれど、文香が間違ったメモを渡してしまったため、悠里は困ってしまう。この回で出てきた料理は親子うどん。本当は親子丼だったのを、姫市原さんが何か考えた結果うどんに変更した。きっと、お腹を空かせて返ってくるだろう悠里のことを考えて、白ご飯を取っておいたのだと思う。このとき文香が食べた親子うどんも、あとで帰ってきた悠里が食べたおにぎりも、どちらも本当に美味しそうだった。でもそれ以上に、ただ料理が上手いだけじゃなく、食べる人のことを考えて料理をする姫市原さんをすごいなと思います。

 これ以降も基本的に、毎回何かしら食べ物が出てくる。出てくるのだけど、料理をメインに見せたい漫画ではないと思う。最も魅かれるのは、料理を作る寮長・姫市原さんの人柄や、食べ物を分けてくれる町の人の温かさ、など。人の優しさに触れられる物語が好き。

*私の好きなエピソード*

 とくに好きなのは第3話、小学2年の堀切実和子(ほりきりみわこ)ちゃん初登場回。実和子は学級委員もやっていて、とてもしっかりした子どもだけど、ところどころで年齢相応な反応が出てくるところが可愛い。

 通学路では帽子をかぶらないとダメ、と実和子がほかの子に注意するシーン。表面上は(学級委員でもあるし)注意しているけれど、一方で、楽しそうにはしゃぐ子どもたちを羨ましく見ていることに、悠里は気づくんですよね。そこで悠里が実和子のコトをいろいろと気遣ってあげるのが優しい。遠足の日の朝実和子の髪をセットしたり、お弁当のアイデアを出したのも悠里。前日遅くまでテレビを見てしまった実和子と、一緒にお風呂に入るところがとくに好き。

 姫市原さんが寮のお母さん的存在だとしたら、悠里はお姉ちゃんみたい。この回の悠里のお姉ちゃんらしい気の回し方と、子どもらしい実和子がお気に入りです。

*連載と単行本の比較*

 コミックキューンのバックナンバーは全部保存しているし、作者の吉村佳先生が単行本でいくつか加筆修正した箇所があるとツイッターで言ってらしたので、読み直すついでに連載と単行本の違いを見てみました。

 最初のほうはセリフの修正が、中盤は絵の修正が多い。セリフに関しては、小学2年生・堀切実和子ちゃんのセリフが、漢字を使うかひらがなを使うかの違いだけど何か所か変わってた。あとは、キャラの名前の間違いが修正されていたりとか。

 絵に関しては、連載でも時間が足りなかったようで描きこみが甘いところが何回かあって、それが全部綺麗に修正されていた! めっちゃ綺麗になってる! どれくらい違うかというのは、作者さん本人のツイートが一番分かりやすいと思ったので、引用させてもらいますね。

 第4話はお弁当が綺麗になってた。ローズさんのタオルに名前も追加されてましたね。第5話は連載時によっぽど時間がなかったのか修正箇所が多くて、とくに上で引用したツイートの添付画像(お風呂上りの悠里とカピバラのローズさん)はかなり綺麗になってて驚いた。いろいろな部活を体験する悠里の、陸上部やバレー部のユニフォーム、ダンス部の衣装などもより細かく描きこまれてた。薙刀をする姫市原さんの佇まいも美しい。第7話の風呂上りの悠里は、連載時のままでも十分じゃないかと思うけど、よーく見ると細部が変わっててこだわりがすごいなと。

 修正されて綺麗になった箇所を見ると、やはり吉村佳先生の絵はとても美しいなぁと思う。第5話で様々な部活にお邪魔した悠里がすごく可愛かった。髪の描き方が好き。風になびく悠里の髪がきれいでとても好きです。

***

 以上、『寮長は料理上手』1巻の感想でした。

 この作品に関しては前にも単独記事を書きましたが、諸事情により消してしまったので、そのとき書いたことも思い出しつつ、改めて書きました。発売からだいぶ時間が経ってしまった…。発売中のコミックキューン8月号では表紙&巻頭カラーやってるのでよろしくね(宣伝)

 吉村佳先生のことは以前から知ってました。でもきちんと作品を読むのは、これが初めて。いずれ昔の作品も読んでみたいなと思ってます。




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